高次聴覚機能障害の種類と鑑別

田中美郷:高次聴覚機能障害の種類と鑑別.失語症研究12:118〜126,1992 高次聴覚機能障害の鑑別:伝音系でないことを証明→気導聴力と骨導聴力の比較 一つの音源から音が左右の耳に達するときには,わずかながらも時間差と音圧差が生じる。これらの情報は上…

有田秀穂:「笑い」と「泣き」の生理学的背景.OTジャーナル41:14-23,2007

前頭前野への入力は頭頂・側頭葉の連合野から視覚性・聴覚性情報として伝達され,前頭前野で笑いの認知的判定が下されると,その出力は,運動野を介するのではなく,線条体や扁桃体等辺縁系を介して,笑い声や表情を形成する脳幹の中枢へと送られる. 笑いの…

坂村雄:感情・人格の障害.よくわかる失語症と高次脳機能障害:428−435,2004

歴史 ・Mayer(1904)は、既に脳損傷によってもたらされる感情障害は、心理社会的な要因と生物学的な要因の組み合わせによって生じる可能性を指摘する一方、せん妄、痴呆などと特定の局在性脳損傷、あるいは原因との関連性についても述べている。 ・Babinski…

有田秀穂:絵画と脳(3)模写機能.臨床神経科学,2006

模写機能の障害は主に両側頭頂葉病変によって引き起こされることが臨床では知られている.一方,健常人で模写課題を行ってfMRI画像を調べると,両側頭葉領域だけではなく,両側の復側運動前野(BA44野)も賦活される.復側運動前野のうち,優位半球(左半球…

菊谷武編著「介護予防のための口腔機能向上マニュアル」2006,健帛社②

医療モデルにおいては,プログラムの効果として,後に述べる機能の評価において向上がみられ(例えば,RSSTの回数が増加したなど),その結果,摂食・嚥下障害が軽症化や治癒に向かったということが求められる。一方,生活機能モデルにおいては,機能評…

菊谷武編著「介護予防のための口腔機能向上マニュアル」2006,健帛社①

なかでも,要支援,要介護1と認定された比較的軽度の高齢者の伸びは大きく,要支援は136%増の686万人,要介護1は145%増の135万人に達し,介護認定を受けた人の約半数を占める。 (中略) 国民の支払う保険料も高騰化し,全国平均月額2,911円であった保険…

岩村吉晃:タッチ<神経心理学コレクション>,医学書院

大性感覚の定義は,最も狭義の身体感覚に相当し,「身体の表層組織(皮膚や粘膜)や,深部組織(筋,腱,骨膜,関節囊,靭帯)にある受容器が刺激されて生じる感覚」です。 P.5Gibsonは,「知覚システムとしての感覚」という著書のなかで,感覚をアリストテ…

岡部慎吾,宇川義一:連続経頭蓋磁気刺激の治療の可能性.神経内科64:473-480,2006

疾患ごとに現状に関しての概略Perkinson病、うつ病、統合失調症、脊髄小脳変性症、不安障害、排尿障害、書痙、てんかん、疼痛、半側空間無視 おわりに 耳鳴りを軽減し,減煙に成功し,本態性振戦の治療や,多発性硬化症に伴う痙性の改善などにも応用した研究…

菅野倫子,藤田郁代,橋本律夫,伊藤智彰:失語症における構文理解障害のパターン―左前頭葉病変と左側頭葉病変例の比較―.神経心理学21:243-251,2005

要旨:構文理解にはすくなくとも統語解析と意味解読が必要といわれるが(Saffran,2001),その脳機構は明らかではない.我々は構文理解障害を呈した左前頭葉病変例及び左前頭葉病変例に文容認性判断検査を実施し,助詞を逸脱文と語彙逸脱文,及び単文と複文…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998⑤

エピローグ 言語演算処理の型の分類 まず、言語にかかわる演算処理には、少なくとも二つの質的に異なったタイプが存在していると考えられる。一つめは、抽象的なレベルでの「規則の適用による文法演算処理」である。これは、言語単位の大きさにかかわらず、…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998④

4.文法の障害と遺伝子特異性言語障害の言語分析 一般に、英語が母語の特異性言語障害の人たちは、文法のなかでもとくに、形態素にかんする誤りが目立つという。とくに、時制をあらわす形態素の誤りが多いと言う。その多くは、John wash the dishes yesterd…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998③

3.言語理論からみた失語症 新語にはルールをあてはめる (1)a抹茶は苦い。外国人の舌には、少し苦みが強すぎるようだ。 b抹茶は苦い。外国人の舌には、少し苦さ強すぎるようだ。 (2)a世界で一番うまいのはおふくろの味だ。そのうまみには、どんなコ…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998②

3.言語理論からみた失語症(ブローカ失語の下位分類である失文法失語について) いずれも文法格助詞が抜け落ちてはいるが、よくみると語の並び方は日本語の基本的な語順である。なんだか電報の文体に似ている。笹沼らの調査では、全発話例のうち98%は、正…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998

1.ことばの仕組み たとえば、英語の動詞の過去形をみてみよう。中学生のときを思い出してもらいたい。 a go‐went do−did be‐was b sing−sang ring−rang spring−sprang c walk−walked talk−talked want−wanted believe―believed 一般には、a、bが不規則…

大川秀樹:慢性期失語症に対するピラセタムの投与経験.高次脳機能研究25:297−305,2005

要旨:ピラセタムは脳血管障害後の失語症に対し急性期に言語療法と併用することにより効果があり、現在欧米では広く使われている医薬品である。 しかし発症から3年以上を経過した慢性期失語症者に対しては現在のところ言語療法も含め有効な治療法はないとさ…

久保田博南:電気システムとしての人体 からだから電気がでる不思議.2001,講談社

1.心臓 発見 1628:W・ハーヴィー(イギリス)が血液が循環していることを発見 1733:S・ヘイルズ(イギリス)が初めてウマの血圧を測定 1857:J・マイヤー(ドイツ)が血液の酸素運搬を発見 1903:W・アイントーフェン(オランダ)が初めて心臓で発生する…

八木明宏著:現代心理学シリーズ6知覚と認知.培風館,1997③

7章 知覚の構造心理学では、記憶が複雑なスキーマ(shema)からなっていると考えられている。スキーマは、最初、バートレット(Bartlett,F.C)によって用いられた概念である。スキーマは過去の経験や環境についての構造化された知識である。(p62)ある…

八木明宏著:現代心理学シリーズ6知覚と認知.培風館,1997②

4章 聴覚の基本特性心理的には、音の大きさ(loudness)、音の高さ(pitch)、音色(timbre)の3要素からなっている。(p31-32)音の大きさは振幅、高さは周波数、音色は波形で、その特徴を表すことができる。(p32) 5章 精神物理学と心理測定法物理量と…

八木明宏著:現代心理学シリーズ6知覚と認知.培風館,1997

1章 感覚と知覚ヴェルトハイマー(Wertheimer,M.)は「私は、明るさや色調を見ているのではない。空を、木を見ているのだ」と述べている。(p3)電磁波としての色や、音圧の変動など物理的な事象を特に問題とするとき、それに対応して生じる心理的な活動…

前頭葉症候群

Ⅰ.定義 前頭葉の損傷により前頭葉が障害されることである。田川ら1)によると前頭葉は「認知や注意、判断、記憶、学習、さらには性格、意欲、行動などと広く関連しており、人間としての存在における最高次の統合の座であり、その障害により多彩な精神症状や…

ハチンスキーの虚血スコア

特徴:得点 急激な発症:2 段階的な増悪:1 症状の消長:2 夜間譫妄:1 人格が比較的保たれている:1 抑鬱:1 身体的訴え:1 感情失禁:1 高血圧の既往:1 脳卒中の既往:2 他のアテローマ硬化の合併:1 神経学的局所症状:2 神経学的局所徴候:2 判定 得点…

福永篤志,大平貴之,加藤元一郎,鹿島晴雄,河瀬斌:後出し負けじゃんけん時の補足運動野の役割.高次脳機能研究25:242−250,2005

要旨:後出し負けじゃんけんの「負けよう」とする認知的葛藤の脳基盤はいまだ明確ではない。今回われわれは,右利き健常人9名に対し,後出しじゃんけん(負けまたはあいこ)負荷時に3テスラfMRIを撮影し,安静時と比べて有意に検出されたBOLDシグナルの…

パーキンソン重症度

http://www.nanbyo.or.jp/zaidan/nanbyo/tokuteisikkan_list/20/n20h2.html

皮質下性痴呆

大脳基底核・間脳・脳幹を病巣とする 症状: ・獲得された知識を操作する能力の障害 ・思考過程や情報処理過程の緩慢化 ・記憶想起の過程の緩慢化(時間をかければ想起は可能) ・無感情、無気力、興奮などの人格や感情の障害 ・失語、失行、失認などの巣症…

辺縁系における回路

Papezの回路(medial limbic circuit): 記憶の変換器海馬→脳弓→乳頭体→乳頭体視床束→視床前核群→帯状回→海馬傍回→海馬 Yakovlevの回路(basolateral limbic circuit): 感情表出複合体扁桃核→視床背内側核→前頭葉眼窩部→鉤状束→側頭葉先端部→扁桃核

大脳基底核の構造と機能

De Longらの説明運動機能:運動野―被核―淡蒼球系を中心とした運動ループ 認知機能:前頭連合野―尾状核系を中心とした複合ループ

脳梁離断症候群

1.左大脳半球優位性に関連する症状 ・左手の失行 ・左手の失書 ・左手の触覚性呼称障害 ・左視野の失読2.右大脳半球優位性に関連する症状 ・右手の左半側空間無視 ・右手の構成障害3.左右対称性の障害 ・位置覚や立体覚、触覚などの移送障害 ・交叉性…

軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)の診断基準

正常と認知症の中間の概念であり、 1.以前よりも認知機能が低下している。 2.日常生活は自立、もしくは軽度の能力障害である。

アルツハイマー病の臨床経過

第1期(1〜3年) ・記憶:新しい事柄の学習困難、記憶の想起も障害される。 ・視空間認知・構成機能:地誌的あ見当識の障害、構成障害 ・言語:失名詞 ・人格:アパシー、焦燥や悲哀感あることも ・EEG:正常 ・CT:正常第2期(2〜10年) ・記憶:想起の障…

treatable dementiaの主要な原因疾患

頭蓋内疾患: 正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍 欝病 代謝異常、内分泌異常: 低血糖発作、慢性低血糖状態 肝性脳症、慢性腎不全、水や電解質の代謝異常、低酸素脳症 ビタミン欠乏症 B1欠乏(ウェルニッケ脳症)、ニコチン酸欠乏(ペルグラ脳症)、B12…