八木明宏著:現代心理学シリーズ6知覚と認知.培風館,1997

1章 感覚と知覚

ヴェルトハイマー(Wertheimer,M.)は「私は、明るさや色調を見ているのではない。空を、木を見ているのだ」と述べている。(p3)

電磁波としての色や、音圧の変動など物理的な事象を特に問題とするとき、それに対応して生じる心理的な活動を感覚という。(p3)

受容器に対する本来の刺激を過刺激あるいは適当刺激、眼に対する圧刺激などを不適刺激あるいは不適当刺激と呼ぶ(p3-4)

対象を細かく弁別できる弁別能力と、その対象を評価する能力を合わせて感性と言うことができる。(p4)

心理学では、感性と知覚との区別はない。しかし、(中略)記憶内容と複雑に絡み合った、より高度な感情、例えば情操を含む知覚現象を日常的には感性と呼んでいる。(p4)

認知は、感覚や知覚だけではなく、注意、記憶、思考、問題解決、意思決定や動作の遂行(パフォーマンス)を含む広い概念である。(p4)


2章 知覚の現象

従来の錯視の研究では、その現象の記述であることが多い。その現象が脳の中で、どのようなメカニズムで行われているか、問題意識があっても、なかなかよい解答は得られていない。(p6)

知覚の恒常性(perceptual constancy)
網膜上での刺激対象の変化(距離、位置、照明条件など)

しかし知覚上は変化ない(大きさ、形、色など)
という、対象が安定して見える傾向

大きさの恒常性、色の恒常性、奥行き知覚の恒常性



われわれは見えたとおりに知覚しているのではなく、知っているとおりに知覚するのである。(p9)


感覚類似の体験
残像、心像(例:友人のことを考える→顔、声、しぐさなどの印象が浮かぶこと)、直観像(例:五目並べをした後など残像ではなく鮮明な像が浮かぶことがある)、幻覚(知覚があるように感じられる。さらに知覚を信じていること)


プレグナンツの法則ゲシュタルト心理学にて知覚が簡潔なかたちにまとまること

運動視差による奥行き知覚は哺乳動物においては、出生後の早い時期に形成される(p15)


3章 視覚の基本特性

通常の太陽光線は白色である。これは菫色から赤までの光のエネルギーが、ほぼ等しいことに感じられる。(p18)

一般に暗順応に要する時間の方が、明順応に要する時間よりも長い。明順応下では、中心窩の錐体細胞は2〜3分で順応するが、完全に順応するまでに10分程度が必要である。(p20)

プルキニエ現象(Purkinje phenomenon)

対象物の色は、①光源のスペクトルエネルギー分布、②対象物の反射率、そして③眼の視感度の三つの要因によって規定される。(p24)

演色性:対象の色の見え方に影響を与える照明の性質

加法混色:カラーテレビなど
減法混色:塗料など


提示時間が短いと閾値以下で知覚されない弱い光でも、その時間を長くすると感じられるようになる。明るさの閾値(L)と刺激の提示時間(T)との間にはL×T=C(Cは定数)という関係があり、ブロックの法則(Bloch`s law)と呼ばれている。この法則はTが100ms以下のときに成立する。その範囲内で、時間的加重があることを示している。(p25)

ブロックの法則をブンゼン・ロスコーの法則と呼ぶこともある(p26)

臨界フリッカー周波数:間欠的に提示される光がちらつきから融合し始める周波数。

視覚マスキング:同網膜上に時間を置いて刺激を与えることによるマスキング。
時間的に過去に遡って生じるマスク効果を逆行性マスキング(backward masking)、後に残る効果を順行性マスキング(forward masking)と呼ぶ。(p26)
両眼間転移がないので網膜上の現象であると考えられている。(p26-27)

メタコントラスト:同一網膜に落ちないとき、近くであればマスキングに類似した現象あり。
この効果は両眼転移が見られるので、主に中枢的な要因が働いていると考えられる。(p27)

パターンマスキング
図形残効
空間周波数


視覚の一過性チャンネルと持続性チャンネル
一過性チャンネル(Yチャンネル):動きや変化の検出。外部からの新奇刺激に対して注意の向けさせる定位販社に関わる。
持続性チャンネル(Xチャンネル):時間をかけて精度よく対象の形状分析を行う。