高次脳機能

有田秀穂:「笑い」と「泣き」の生理学的背景.OTジャーナル41:14-23,2007

前頭前野への入力は頭頂・側頭葉の連合野から視覚性・聴覚性情報として伝達され,前頭前野で笑いの認知的判定が下されると,その出力は,運動野を介するのではなく,線条体や扁桃体等辺縁系を介して,笑い声や表情を形成する脳幹の中枢へと送られる. 笑いの…

坂村雄:感情・人格の障害.よくわかる失語症と高次脳機能障害:428−435,2004

歴史 ・Mayer(1904)は、既に脳損傷によってもたらされる感情障害は、心理社会的な要因と生物学的な要因の組み合わせによって生じる可能性を指摘する一方、せん妄、痴呆などと特定の局在性脳損傷、あるいは原因との関連性についても述べている。 ・Babinski…

有田秀穂:絵画と脳(3)模写機能.臨床神経科学,2006

模写機能の障害は主に両側頭頂葉病変によって引き起こされることが臨床では知られている.一方,健常人で模写課題を行ってfMRI画像を調べると,両側頭葉領域だけではなく,両側の復側運動前野(BA44野)も賦活される.復側運動前野のうち,優位半球(左半球…

菅野倫子,藤田郁代,橋本律夫,伊藤智彰:失語症における構文理解障害のパターン―左前頭葉病変と左側頭葉病変例の比較―.神経心理学21:243-251,2005

要旨:構文理解にはすくなくとも統語解析と意味解読が必要といわれるが(Saffran,2001),その脳機構は明らかではない.我々は構文理解障害を呈した左前頭葉病変例及び左前頭葉病変例に文容認性判断検査を実施し,助詞を逸脱文と語彙逸脱文,及び単文と複文…

大川秀樹:慢性期失語症に対するピラセタムの投与経験.高次脳機能研究25:297−305,2005

要旨:ピラセタムは脳血管障害後の失語症に対し急性期に言語療法と併用することにより効果があり、現在欧米では広く使われている医薬品である。 しかし発症から3年以上を経過した慢性期失語症者に対しては現在のところ言語療法も含め有効な治療法はないとさ…

前頭葉症候群

Ⅰ.定義 前頭葉の損傷により前頭葉が障害されることである。田川ら1)によると前頭葉は「認知や注意、判断、記憶、学習、さらには性格、意欲、行動などと広く関連しており、人間としての存在における最高次の統合の座であり、その障害により多彩な精神症状や…

福永篤志,大平貴之,加藤元一郎,鹿島晴雄,河瀬斌:後出し負けじゃんけん時の補足運動野の役割.高次脳機能研究25:242−250,2005

要旨:後出し負けじゃんけんの「負けよう」とする認知的葛藤の脳基盤はいまだ明確ではない。今回われわれは,右利き健常人9名に対し,後出しじゃんけん(負けまたはあいこ)負荷時に3テスラfMRIを撮影し,安静時と比べて有意に検出されたBOLDシグナルの…

皮質下性痴呆

大脳基底核・間脳・脳幹を病巣とする 症状: ・獲得された知識を操作する能力の障害 ・思考過程や情報処理過程の緩慢化 ・記憶想起の過程の緩慢化(時間をかければ想起は可能) ・無感情、無気力、興奮などの人格や感情の障害 ・失語、失行、失認などの巣症…

辺縁系における回路

Papezの回路(medial limbic circuit): 記憶の変換器海馬→脳弓→乳頭体→乳頭体視床束→視床前核群→帯状回→海馬傍回→海馬 Yakovlevの回路(basolateral limbic circuit): 感情表出複合体扁桃核→視床背内側核→前頭葉眼窩部→鉤状束→側頭葉先端部→扁桃核

大脳基底核の構造と機能

De Longらの説明運動機能:運動野―被核―淡蒼球系を中心とした運動ループ 認知機能:前頭連合野―尾状核系を中心とした複合ループ

脳梁離断症候群

1.左大脳半球優位性に関連する症状 ・左手の失行 ・左手の失書 ・左手の触覚性呼称障害 ・左視野の失読2.右大脳半球優位性に関連する症状 ・右手の左半側空間無視 ・右手の構成障害3.左右対称性の障害 ・位置覚や立体覚、触覚などの移送障害 ・交叉性…

失行apraxia

Apraxiaの診断Liepmannの定義 1.運動障害(マヒなど)・了解障害(失語)・認知障害(失認)がないorでは説明できない。 2.課題意図の理解障害(痴呆)・意欲の障害がない。 3.指示された運動や物品使用を誤る。実際の診断 1.痴呆などとの鑑別が可能…

永井知代子:Williams症候群の神経心理学.神経心理学20:136-145,2004(特集「発達心理学」)

要旨:Williams症候群(WS)は第7染色体の半接合体欠失による隣接遺伝子症候群である.言語機能良好/視空間認知不良など特異な認知機能パターンをとることから,近年認知神経科学分野で注目されている.当初は言語・視空間認知など認知モジュールの生得説…

増本康平,高井恒夫:被験者実演課題を用いたAlzheimer病患者のエピソード記憶に関する研究.神経心理学18:239-246,2002

アルツハイマー病患者、高齢者、若年者を対象。 言語課題(VT)、言語/道具課題(VT/O)、実験者実演課題(EPT)、被験者実演課題(SRT)を実施。材料:行為文 言語課題(VT):口頭で提示した行為文を記銘。 言語/道具課題(VT/O):言語提示と同時に行為…

池谷裕二:記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方.講談社.2001

海馬の信号の流れ 「側頭葉」→「歯状回」→「CA3野」→「CA1野」→「側頭葉」 海馬に記憶がとどまっている期間は長くても1ヶ月程度。 θ波:主に海馬から発せられる脳波。5ヘルツで規則的なリズムをもつ。θ波が発生するとき。 新しいものに出会う。 初めての場…

池谷裕二:記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方.講談社.2001

(p.66,67) プライミング記憶が発見されたのは1980年代のことで、それ以前には存在すら知られていなかったのです。そこで、プライミング記憶について説明する前に、簡単な実験をしてみましょう。まず次の文章を読んでみてください。これはアメリカが生んだ…

寺尾安生:TMS(Transcranial magnetic stimulation)による高次大脳機能の解析.神経内科,63:47-52,2005

Virtual lesion法 磁気刺激をすることにより、皮質に一種のノイズが加わることによって直下の皮質で行われている情報処理が一過性に妨害されることを利用する(p.47)Virtual lesion法を用いて皮質領域の機能的マッピングを行うことが可能 著者はVirtual les…

石合純夫:半側空間無視を解明する!―BITからdeep testsへ―.高次脳機能研究24:232-237,2004

「空間性注意」(spatial attention)」:「外界と固体との空間的な関係の中で,意識を適切な対象に集中し,また必要に応じて移動していく過程の総体」Ⅲ.BITからdeep testsへ ・抹消試験 ・線分二等分試験 ・模写・描写試験

森田秋子,小林修二:知的機能が失語症患者の基本ADLに与えている影響―レーブン色彩マトリックス検査を用いて―.高次脳機能研究25:26-32,2005 22:57

因果モデルを仮定して相関を出す。モデルに使用した要素は入院時の年齢(AGE)発症から入院までの期間(POA)バーセル・インデックス(BI)レーブン色彩マトリックス検査(RCPM)標準失語症検査(SLTA)体幹下肢運動年齢(MOA)上肢機能得点(MFS) 結果SLTA…

ウィリアムズ症候群

・健常より脳の総容積少ない ・前頭葉と側頭葉辺縁系は問題なし ・小脳正常 ・一次聴覚野、聴覚野側頭平面が肥大化している

酒井邦嘉:言語の脳科学.中央公論新社,2002

第12章「言語獲得の謎―言葉はどのようにして身につくか」(p.283〜284) 乳児は、六カ月までに母語の音声の特徴を認識できることが、アメリカの心理学者のクール(P.K.Kuhl)らによって明らかにされた。実験では、スウェーデン語、英語、日本語のいずれか…

酒井邦嘉:言語の脳科学.中央公論新社,2002

第8章「自然言語処理―人工知能の挑戦」(p.213) ニューラルネットでは、ニューロンに相当する素子同士の結合(コネクション)を強めたり弱めたりすることで、学習の効果を保存する。このようなアプローチのことを、「コネクショニスト・アプローチ」または…

酒井邦嘉:言語の脳科学.中央公論新社,2002

第5章「言語の脳科学―言語はどのようにして調べられるか」経頭蓋摘磁気刺激(transcranial magnetic stimulation):TMS 1秒に数回〜数十回の刺激でてんかん発作を誘発するおそれあり。 数秒に1回の単発もしくは2発の磁気刺激は、健常者に対して問題ない。…

酒井邦嘉:言語の脳科学.中央公論新社,2002

第3章「モジュール仮説―言語はどこまで分けられるか」(p.64) 意味論の古典的な考えは、「外延(extension)」と「内包(intension)」を区別することである。外延とは、ある意味(概念)の適用できる要素の範囲のことである。例えば、動物の外延は、魚や鳥…

酒井邦嘉:言語の脳科学.中央公論新社,2002

第2章「獲得と学習―人間はチンパンジーとどこが違うか」(p.37) そもそも、言語が何かの必要性から生まれたと考えるのは誤りである。この点は、進化の議論によくある落とし穴だ。鳥の翼は飛ぶために必要なものだが、飛ぶ必要性から翼が進化したわけではな…

酒井邦嘉:言語の脳科学.中央公論新社,2002

第1章:脳―心―言語「脳はどのようにことばを生みだすか」が難問である理由 1) 言語は脳の高次機能の頂点にあるため、ブラックボックスの究極であるから。 「一般に言語はコミュニケーションのための手段だと考えられているが、言語のはたらきはそれだけで…

酒井邦嘉:言語の脳科学.中央公論新社,2002

はじめに (p.鄯〜鄱)「言語」とは『広辞苑(第五版)』に、「人間が音声または文字を用いて思想・感情・意思などを伝達したり、理解したりするために用いる記号体系」とある。一方、「言葉」とは、「ある意味を表すために、口で言ったり字に書いたりする…

森田秋子,小林修二:知的機能が失語症患者の基本ADLに与えている影響―レーブン色彩マトリックス検査を用いて―.高次脳機能研究25:26-32,2005

因果モデルを仮定して相関を出す。 モデルに使用した要素は 入院時の年齢(AGE) 発症から入院までの期間(POA) バーセル・インデックス(BI) レーブン色彩マトリックス検査(RCPM) 標準失語症検査(SLTA) 体幹下肢運動年齢(MOA) 上肢機能得点(MFS) …

作話

「実際に体験しなかった出来事の誤った想起(発話)」 譫妄などの意識障害、内因性精神病などでみられる異常な発話より内容の筋通る。分類 ①出現形式 自発作話(生産性作話):自発的に作話を語る 誘発作話:周囲との会話など外的な刺激に作話を語る 当惑作…

認知神経心理学

脳損傷例の認知機能や言語機能を観察→障害が健常者の機能を表すモデルのどこが損傷している場合に生じるのかを主として研究する