八木明宏著:現代心理学シリーズ6知覚と認知.培風館,1997③


7章 知覚の構造

心理学では、記憶が複雑なスキーマ(shema)からなっていると考えられている。スキーマは、最初、バートレット(Bartlett,F.C)によって用いられた概念である。スキーマは過去の経験や環境についての構造化された知識である。(p62)

あるスキーマ自体が、他の下位のスキーマ(サブスキーマ)から成り立っており、複雑な階層構造をなしていると考えられる。(p62)

あるスキーマの活動が、連続的に次のスキーマの活動を引き起こすのである。(p63)

ATS理論(activation trigger schema model)
ノーマン:
①ある行動にはスキーマが形成される
スキーマは階層的構造をもつ
③意図の形成とは最高次のおやスキーマの活性化である
④親スキーマの活性化に伴って、子スキーマ(サブスキーマ)は自動的に活性化される
⑤関連するスキーマにも活性化が波及する
⑥活性化されたスキーマがトリガーされて行為が遂行される


8章 知覚の発達

奥行き知覚:自発的な運動が必要

視覚の機能について、ハードウェアとしての神経系が発達する時期があり、臨界期(critical period)と呼ばれている。知覚するための脳の基本的な構造は、ネコでは出生後約8週間、人では2〜3年のうちに完成すると考えられる。この時期に外界からの刺激情報とニューロンの発達との相互作用がないと、未熟なままになってしまう。(p69)

ピアジェ(Piaget,J)は、発達心理学の研究で、0〜2歳を感覚運動的知能の段階と呼んでいる。最初は反射で環境にかかわっているだけであるが、反復するうちに習慣が形成されてくる。4ヵ月が過ぎると行為の結果に気づくようになり、7ヵ月を過ぎるとその行為を目的指向的に用いるようになる。(p71)


ラルムハート(Rumelhart,D,E.)とノーマンは、スキーマに関する学習過程を、①付加(accretion)、②調整(tuning)、③再構成化(restructuring)の三つに分けている。付加は既存のスキーマに新たな情報が付加されていくことである。再構成化は既存のスキーマの構造を修正し再構造化していくことによって新たなスキーマを作ることである。調整は既存のスキーマを調整することによって、より適切に問題に対処するようにすることである。(p71)

9章 注意

チェリー(cherry,E,C.)は両耳分離聴(dichotic listning)と追唱(shadowing)という手続きを用いて選択的注意の研究を行った。(中略)被検者には左右のヘッドフォンから左右別々のメッセージを聞かせ、一方の耳に提示されたメッセージを声を上げて追唱するように求めた。(p73)

注意されなかったメッセージは完全に無視されるのではなく、声の質など物理的なレベルでは処理されるが、意識的なレベルまでは処理されないことが明らかになった。(p73)

覚醒水準が上がって目が覚め、さらに高くなると注意と関連してくる、覚醒のタイプとして、持続性の覚醒(tonic arousal)と一過性の覚醒(phasic arousal)という分類がある。(中略)持続性の覚醒とは、ゆっくりと変動する覚醒水準の変動のことで、一過性の覚醒とは外部刺激が与えられた後、数秒間の短い変動である。(p76)

ヴィジランス(vigilance)とは長時間注意を持続して、信号の出現を見張っている状態である。(p77)


10章 近くの情報処理的研究

全体的特徴が部分特徴に先行して処理されるらしい。(p86)

11章 感覚・知覚の心理生理学

眼球運動:
随意運動:
サッカディック眼球運動
追従眼球運動
輻輳解散運動
不随意運動:
 前庭動眼反射
 前庭性眼震
 視運動性眼震
 微小眼球運動(トレモー、フリック、ドリフト)

事象関連電位
人や動物が外部から刺激を受けると、それに対応した電位変化が脳内に生じる。事象関連電位の研究の所期のころは、刺激によって引き起こされる電位であるということから誘発電位(evoked potential)と呼ばれていた。(中略)外的刺激でなく、被検者の内的な心理要因によっても生じることから、最近では広い意味をもつ事象関連電位(eventrelated potential,ERP)という用語が用いられることが多い。(p107)


12章 認知と事象関連電位

13章 知覚研究の工学的応用

官能検査

パターン認識のモデル
鋳型モデル
特徴抽出モデル:パンデモニウムモデル
スペシャリストデーモン