2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998⑤

エピローグ 言語演算処理の型の分類 まず、言語にかかわる演算処理には、少なくとも二つの質的に異なったタイプが存在していると考えられる。一つめは、抽象的なレベルでの「規則の適用による文法演算処理」である。これは、言語単位の大きさにかかわらず、…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998④

4.文法の障害と遺伝子特異性言語障害の言語分析 一般に、英語が母語の特異性言語障害の人たちは、文法のなかでもとくに、形態素にかんする誤りが目立つという。とくに、時制をあらわす形態素の誤りが多いと言う。その多くは、John wash the dishes yesterd…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998③

3.言語理論からみた失語症 新語にはルールをあてはめる (1)a抹茶は苦い。外国人の舌には、少し苦みが強すぎるようだ。 b抹茶は苦い。外国人の舌には、少し苦さ強すぎるようだ。 (2)a世界で一番うまいのはおふくろの味だ。そのうまみには、どんなコ…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998②

3.言語理論からみた失語症(ブローカ失語の下位分類である失文法失語について) いずれも文法格助詞が抜け落ちてはいるが、よくみると語の並び方は日本語の基本的な語順である。なんだか電報の文体に似ている。笹沼らの調査では、全発話例のうち98%は、正…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998

1.ことばの仕組み たとえば、英語の動詞の過去形をみてみよう。中学生のときを思い出してもらいたい。 a go‐went do−did be‐was b sing−sang ring−rang spring−sprang c walk−walked talk−talked want−wanted believe―believed 一般には、a、bが不規則…

大川秀樹:慢性期失語症に対するピラセタムの投与経験.高次脳機能研究25:297−305,2005

要旨:ピラセタムは脳血管障害後の失語症に対し急性期に言語療法と併用することにより効果があり、現在欧米では広く使われている医薬品である。 しかし発症から3年以上を経過した慢性期失語症者に対しては現在のところ言語療法も含め有効な治療法はないとさ…