菊谷武編著「介護予防のための口腔機能向上マニュアル」2006,健帛社①


 なかでも,要支援,要介護1と認定された比較的軽度の高齢者の伸びは大きく,要支援は136%増の686万人,要介護1は145%増の135万人に達し,介護認定を受けた人の約半数を占める。
(中略)
国民の支払う保険料も高騰化し,全国平均月額2,911円であった保険料が,2006年4月以降は4,300円になるとも予想されている。

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今回導入される介護予防の考え方は,この廃用性症候群に対する取り組みであり,生活機能の低下が軽度である早い時期にリハビリテーションを行うことで,日常の活動性を向上させることを目的としている。つまり,自立しているADLは自分で行い,介護を要する場合でも過剰な介護を避け,家事や趣味等の活動や社会行動等でもできることは積極的に行い,生活全般を活発化させ,社会活動範囲を拡大させることが重要であるとしている。

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地域に新設される「地域包括支援センター」では,高齢者の生活機能等がチェックされる「基本チェックリスト」と呼ばれるものを用いて,スクリーニングやアセスメントを通して,ケアマネジメントが行われる。

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口腔ケアという用語には,広義と狭義の意味がある。
広義には口腔のもっているあらゆるはたらき(咀嚼,嚥下,発音,呼吸など)を介護することを意味する。
狭義では口腔衛生の維持・向上を主眼に置く一連の口腔清掃を中心とした口腔ケアを指す。

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特に,経口摂取を行っていない高齢者やペースト食などのほとんどかむことを必要としない食物を摂取している高齢者は,口の動きが制限される。さらに,唾液の分泌も少なくなるために,この自浄作用による清掃効果がほとんど期待できなくなる。その結果,口腔内の汚れは悪化し,細菌数の増加,いわゆる悪玉菌の増加が認められるようになる。

要介護高齢者の口腔清掃の自立度にかかわる3つの構成要素(歯磨き:brushing・義歯着脱:denture wearing・うがい:mouth rinsing)が低下したとき,口腔内の環境は一気に悪化する

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継続的な口腔ケアを行うことで,誤嚥性肺炎の予防に有効であるということは,研究によって明らかになっている。これらの結果は,口腔ケアによって肺炎発症を40%減少させること,さらに,肺炎による死亡率を50%に減少させることを示しており,「介護予防」における口腔ケア(口腔機能向上)の地位を不動のものにしている。

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口腔清掃を中心とした口腔ケアは,感染源対策としての細菌の除去ばかりでなく嚥下反射や咳嗽反射を活性化する感染経路対策としても有効であることが示された。

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在宅要介護高齢者に対する調査では,対象者の約10%がこの1年間に窒息の経験をもっていた。窒息の原因となった食物は多い順に,ご飯,肉類,果物や野菜であった。

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口腔ケアの目的は「気道感染予防」であるということを意識づける必要がある。

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