失語

菅野倫子,藤田郁代,橋本律夫,伊藤智彰:失語症における構文理解障害のパターン―左前頭葉病変と左側頭葉病変例の比較―.神経心理学21:243-251,2005

要旨:構文理解にはすくなくとも統語解析と意味解読が必要といわれるが(Saffran,2001),その脳機構は明らかではない.我々は構文理解障害を呈した左前頭葉病変例及び左前頭葉病変例に文容認性判断検査を実施し,助詞を逸脱文と語彙逸脱文,及び単文と複文…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998⑤

エピローグ 言語演算処理の型の分類 まず、言語にかかわる演算処理には、少なくとも二つの質的に異なったタイプが存在していると考えられる。一つめは、抽象的なレベルでの「規則の適用による文法演算処理」である。これは、言語単位の大きさにかかわらず、…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998④

4.文法の障害と遺伝子特異性言語障害の言語分析 一般に、英語が母語の特異性言語障害の人たちは、文法のなかでもとくに、形態素にかんする誤りが目立つという。とくに、時制をあらわす形態素の誤りが多いと言う。その多くは、John wash the dishes yesterd…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998③

3.言語理論からみた失語症 新語にはルールをあてはめる (1)a抹茶は苦い。外国人の舌には、少し苦みが強すぎるようだ。 b抹茶は苦い。外国人の舌には、少し苦さ強すぎるようだ。 (2)a世界で一番うまいのはおふくろの味だ。そのうまみには、どんなコ…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998②

3.言語理論からみた失語症(ブローカ失語の下位分類である失文法失語について) いずれも文法格助詞が抜け落ちてはいるが、よくみると語の並び方は日本語の基本的な語順である。なんだか電報の文体に似ている。笹沼らの調査では、全発話例のうち98%は、正…

萩原裕子:脳にいどむ言語学.岩波書店,1998

1.ことばの仕組み たとえば、英語の動詞の過去形をみてみよう。中学生のときを思い出してもらいたい。 a go‐went do−did be‐was b sing−sang ring−rang spring−sprang c walk−walked talk−talked want−wanted believe―believed 一般には、a、bが不規則…

大川秀樹:慢性期失語症に対するピラセタムの投与経験.高次脳機能研究25:297−305,2005

要旨:ピラセタムは脳血管障害後の失語症に対し急性期に言語療法と併用することにより効果があり、現在欧米では広く使われている医薬品である。 しかし発症から3年以上を経過した慢性期失語症者に対しては現在のところ言語療法も含め有効な治療法はないとさ…

佐野洋子,加藤正弘:脳が言葉を取り戻すとき―失語症のカルテから―.日本放送出版協会,2004

(p.21) 失語症者が言語訓練を通しておこなう作業は、言語を再び学びなおすこと、すなわち再学習とは根本的に異なる。言語訓練の理論では、失語症を単に「脳の中で言葉が消失した状態」とは考えない。そうではなく、「言葉を自由に外界から脳に取り込んだり…

宇野彰,狐塚順子,豊島義哉,春原則子,金子真人:小児失語における回復の経過―SLTA総合評価尺度による分析―.高次脳機能研究24:303-314,2004

要旨:本報告の目的は,小児失語の改善因子,回復の経過,障害構造に関して,限局病巣を有する18例について客観的評価法を用いて検討することである。間隔尺度化された得点法である標準失語症検査(SLTA)総合評価得点を指標とした。また,大脳後方に限局的…

聴理解における脳の局在

聴覚的把持に関与する部位: ・第2側頭回聴覚的理解に関与する部位: ・Wernicke野 ・聴覚野 ・横側頭回 ・縁上回下部(音の微妙な差異) ・第2側頭回(カテゴリー分類)

森田秋子,小林修二:知的機能が失語症患者の基本ADLに与えている影響―レーブン色彩マトリックス検査を用いて―.高次脳機能研究25:26-32,2005 22:57

因果モデルを仮定して相関を出す。モデルに使用した要素は入院時の年齢(AGE)発症から入院までの期間(POA)バーセル・インデックス(BI)レーブン色彩マトリックス検査(RCPM)標準失語症検査(SLTA)体幹下肢運動年齢(MOA)上肢機能得点(MFS) 結果SLTA…

森田秋子,小林修二:知的機能が失語症患者の基本ADLに与えている影響―レーブン色彩マトリックス検査を用いて―.高次脳機能研究25:26-32,2005

因果モデルを仮定して相関を出す。 モデルに使用した要素は 入院時の年齢(AGE) 発症から入院までの期間(POA) バーセル・インデックス(BI) レーブン色彩マトリックス検査(RCPM) 標準失語症検査(SLTA) 体幹下肢運動年齢(MOA) 上肢機能得点(MFS) …

相馬芳明,田邉敬貴:神経心理学コレクション 失語の症候学.医学書院,2003

「ブローカ失語は純粋語啞とブローカ領域失語の合併症状であると考えるのが最も自然であろう」(p.14)「伝導失語の主症状は音韻性錯語である。また言語性短期記憶の低下も伴う」(p.17) 「D.Benson(1679)は,ブローカ失語,ウェルニッケ失語,伝導失語を…

五十嵐浩子,小嶋知幸,佐野洋子,加藤正弘:失語症の回復における大脳対側半球の役割について.高次脳機能研究24:353-359

説:失語症の機能回復についての大脳生理学的機序 ①損傷部位周辺の機能回復、再構築される ②対側の大脳半球、対応する部位に機能が再構築される ③発症初期は病側の機能回復、長期では反対側に機能回復される 症例:左脳損傷後失語、約8年にわたる回復後、右…

山鳥重:ヒトはなぜことばを使えるか 脳のふしぎ.講談社,1998

こころ 「心を定義するのはなかなか難しい。無理を承知でやっつければ、脳が自己の内部からの物理化学的な神経情報(自律神経系や筋肉・骨格系からの神経情報)や、外部からの物理化学的な神経情報(皮膚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚などからの神経情報)を処理…

山鳥重:ヒトはなぜことばを使えるか 脳のふしぎ.講談社,1998

「動物の心の動きは行動(運動)に現れる。行動は決して特定の刺激に対する反応ではない」(p.6)「失語症の症状はそのような複雑に入り組んだ、脳・心・ことばの関係を探る貴重な窓である。有機体たる人間は、自分の脳が損傷し、その結果出現した心や言語の…

Marcelo Bethier:超皮質性失語.波田野和夫監訳,新興医学出版,平成14年

・検査 TCAの境界点(cut−off score)を提示しているバッテリー ・NCCEA(神経感覚センター失語包括検査:Neurosensory Center Comprehensive Examination for Aphasia) ・WAB(西部失語症検査:Western Aphasia Battery) ・BDAE(ボストン失語診断検査:B…

Marcelo Bethier:超皮質性失語.波田野和夫監訳,新興医学出版,平成14年

・症状 TCMA 分類:古典的、力動失語、非定型 古典的TCMA: 発病初期、完全な無言or辞発話の著しい減少。無言症は一過性。 自発話の回復→散発的な発話、単語や何度も学習された句にとどまる。 発話開始の努力(effortful initiation)、躊躇、言語保…