八木明宏著:現代心理学シリーズ6知覚と認知.培風館,1997②

4章 聴覚の基本特性

心理的には、音の大きさ(loudness)、音の高さ(pitch)、音色(timbre)の3要素からなっている。(p31-32)

音の大きさは振幅、高さは周波数、音色は波形で、その特徴を表すことができる。(p32)


5章 精神物理学と心理測定法

物理量と心理量の関数関係を調べる学問が精神物理学(psychophysics)である。(p37)

感覚を生じるか生じないかの境界点を刺激閾(stimulus threshoid)、あるいは絶対閾(absolute threshold)と呼ぶ。感覚ではなく、より高次な単語や図形などが知覚できる閾値は、認知閾(recognition threshold)と呼ばれる。刺激の強度をいっそう強くしてゆくと、適刺激としての感覚が、痛みに変わる上限がある。これを刺激頂(terminal stimulus)と呼ぶ。(p37-38)

ある刺激からその値が変化したと気づく最小の値を弁別閾(difference threshold)、または丁度可知差異(justnoticeble difference;jnd)という。(p38)

増加分の弁別閾を上弁別閾、減少分の弁別閾を下弁別という。上弁別閾の値と、下弁別閾の値との間は、不定帯(interval of uncertainty)である。不定帯は2単位のjndを含んでいる。(p38)

閾値
実際には「感じられる」という報告と、「感じられない」という報告の確率が50%になる値である。(p38)

測定法
古典的手法:調整法、極限法、恒常法

調整法(method of adjustment):被験者自身に刺激を変化させる。簡便。被験者の意図が入りやすく、結果に影響する。

極限法(method of limits):実験者自身が刺激変化を行う。被験者が2件法もしくは3件法で反応させる。刺激変化が一方向であり被験者の予測が結果に影響する。



恒常法(constant method):被験者の予測の効果を排除する。刺激をランダムに提示。

階段法(staircase method):極限法の変法。反応が変化するごとに強度変化の方向を逆転させる。上下法、トラッキング法とも。


マグニチュード推定法:基準の数値を設ける。被験者は刺激を数値で答える。

マグニチュード推定法を用いて、スチーブンスは刺激強度と感覚量がベキ関数になることを見いだした。(p41)


信号検出理論(signal detection theory):閾値をノイズからの信号の検出ととらえる
ペイオフマトリックス:刺激と反応の関係図。ノイズ+信号、ノイズのみの時の反応を誤反応をあわせて調べる。

反応時間:
片目、片耳の場合よりも、両眼、両耳の方がRTは短い。これを両側加重と呼ぶ。(p45)
ドンダースの減算法:反応時間を用いてヒトの精神活動を測定しようとした。


6章 感覚・知覚に関わる神経系

シナプス結合:
シナプス相互の連絡としては、①生まれつき備わっているもの(反射的)、②誕生後きわめて初期の段階に形成されるもの(初期学習に関する)、③その後の成長過程で形成されるもの(いわゆる学習に関係)がある。(p53)

視覚:
人やサルの網膜には錐体と桿体の両方がある。ハトなど普通の鳥類には錐体しかない。しかし、イヌやネコなどの哺乳類では大部分が桿体である。したがって、ハトは色の区別ができるが、「鳥目」であり、暗闇ではよく見えない。ネコやイヌは夜でも活動できるが、色盲である。(p54)

神経節細胞は、機能的にX細胞とY細胞の2種類の細胞に分類されている。X細胞は刺激が入力されている間、興奮をし続けるタイプで、持続型細胞と呼ばれている。Y細胞は刺激のオンのときに一過性に興奮するタイプで、一過型細胞と呼ばれている。(p55)

神経伝達:
視交差→外側膝状体→視覚(知覚の処理)
   →上丘→眼球運動の制御(刺激対象の定位)

視覚皮質:
(略)第一次視覚野と呼ぶが、機能の異なるいくつかの領野から構成されている。領野はさらにコラムと呼ばれるより下位の組織から構成されている。一つのコラムは0.5〜1mmほどの大きさで、数万個のニューロンが規則的に並んでいる。(p57)

パターン認知などに関わる情報処理は、単純細胞、複雑細胞、超複雑細胞などによって、基本的な処理が行われている。単純細胞には、様々なタイプがあり、エッジの検出や線分の検出をおこなう。図形の各辺に反応し、辺の微細構造を見るのに役立っている。
複数の単純細胞から信号を受ける複雑細胞は、スリットの幅や傾きに選択的に活動し、単純細胞よりも少し抽象的な働きをする。図形の大まかな形を検出する。超複雑細胞になると、特定の大きさのスリットなどに反応する。また図形や文字の角あるいは角度の検出を行う。第一次視覚野では、そのほか、色、運動の方向などの情報が検出される。(p57)