山鳥重:ヒトはなぜことばを使えるか 脳のふしぎ.講談社,1998

こころ
「心を定義するのはなかなか難しい。無理を承知でやっつければ、脳が自己の内部からの物理化学的な神経情報(自律神経系や筋肉・骨格系からの神経情報)や、外部からの物理化学的な神経情報(皮膚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚などからの神経情報)を処理して、自覚的な経験に変換する仕組みとでもいえば、当たらずといえども遠からずであろう」
(p.157〜158)

識→情→知→意
「意識が感情を可能にし、感情が知を可能にし、知が意を可能にする。あるいは意識が感情の出現を準備し、感情が知の出現を準備し、知が意の働きを準備する」
(p.160)

意識(覚醒)
「上部脳幹の網様体系に病巣が生じると、昏睡(刺激によって覚醒しなくなる状態)におちいり、視床網様体系が損傷を受けると、譫妄状態(刺激に対して適切な反応ができなくなる状態)や傾眠状態におちいってしまう」
(p.164)

知の活動
「かたちの持たない認知過程、感情の土台に立って分節され、輪郭を持つ表象性の心理過程」
(p.170)
知→心の表象過程のすべて


意思、意志、意図
「行動に方向を与える心の働き」
(p.173)
前頭前野こそ意志の発現、未来への展望といった意の働きの発現にもっとも深く関わっている。実際、この領域が両側性に大きく壊れると、患者は未来を失い、過去だけに生きるようになる。行動は以前に獲得した習慣的な繰り返しになり、新しい行動は生み出されなくなる。行動は状況に合わせ選択されることができなくなり、内的なリズムだけを頼りに選択される」
(p.178〜179)


外界認識の層状構造

環境

原初性情報処理:感情(大脳辺縁系

弁別性情報処理:認知(大脳後方連合野

判断・行動(大脳前頭連合野