認知症

1間違えられやすい状態
・仮性認知症
うつが多い
・高齢者の幻覚妄想状態:
妄想の内容「夜中、だれかが家に入ってくる。ガラガラっとういう音がして、カーテンがユラユラゆれて、多々死の布団の裾をスーッと持ち上げるの」など比較的情景描写が詳細なもの、日常的、世俗的なもの。
ひとり暮らしの女性に多い。難聴や白内障などの感覚障害を伴っていることが多い。
統合失調症の高齢化
・高齢者の人格障害
・譫妄:発症ははっきりとしている。急性の発症と症状の急激な変動が認知症との鑑別点。
※「一般的に言って、夜間の『問題行動』を夜間になって対応しようとするのでは遅すぎる。日中の過ごし方に課題があることが多いのである」(p.14)

認知症の症状
中核症状
・記憶障害:
認知症は、まずこのエピソード記憶の障害からはじまることが多い」(p.31)リボー(Ribot,T.A.1839‐1916)の原則

①記憶は、最近のできごとから失われていく。
②知的に習得されたものの方が、体験的なものより失われやすい。
③感情的能力は知的能力よりはるかにゆっくりとしか失われない。
④日常の習慣的なこと、長い間身についた習慣、たとえば着衣、食事摂取、手仕事、トランプなどは、最後まで残る。
  通常、「リボーの原則」といわれるのは①で、記憶の逆行則あるいは時間的傾斜とよばれるのだが。他の記述も的確で、味わい深い。(p.32,33)

見当識障害
・失語、失行、失認
・病態失認

周辺症状
・幻覚妄想状態:もの盗られ妄想、嫉妬妄想、幻の同居人妄想など
・精神状態:不眠、抑鬱、不安、焦燥など
・行動障害:徘徊、弄便、収集癖、攻撃性など
「周辺症状は、①認知症の種類、進行の加速度、合併症の有無などの、病の側の要因、②病をかかえた当人の人柄や生活史などの個人的要因、③彼らが今、どのような状況あるいは人と人とのつながりを生きているかという状況的要因などの複雑な絡みから生成する。」(p.24,25)
「ただ、ご家族が「認知症って治らないんですよね」と言われることがある。しかし、ここで言われる「認知症」には中核症状だけではなく、周辺症状も含まれていることが多い。そのようなときには治せるものと、治せないものとを区別して伝える必要はある。たとえば、「もの忘れは治らないでしょうが、もの盗られ妄想は必ず治りますよ」と言うのである」(p.153)
コレクションについて
「どうしようもない寂しさ、喪失感、そして心にぽっかりとあいた隙間を、物を集めることで埋めようとする行為ではないか、と私は考えてきた。嬉々としてコレクションをしている人はあまりなく、何かにとりつかれたような、不安げな表情で物を集めておられることが多いのである」(p.162)

認知症初期
「この事例に私の経験を加えて、認知症のはじまりとして述べたかったことは、以下の三点である。
認知症の初期発症として周囲に気づかれる記憶障害は、エピソード記憶の障害であることが多い。
アルツハイマー認知症にはその初期から病態失認的態度がみられる。つまり、一見記憶障害に思い悩んでいるかにみえても、一つひとつのもの忘れのエピソードに対しては、以外なほどに動揺を示さない。このような病態失認的態度を伴ってはじめて記憶障害は日常的不適応を生み、認知症特有の記憶障害に転化する。
③個々の健忘のエピソードに対しては病態失認的態度を示すにもかかわらず、初期アルツハイマー認知症を生きる者には日常生活上のつまずきが蓄積して生じる不如意の感覚、つまりなんとなくうまくいっていないという感覚、あるいは自我が解体していく漠たる予感と不安が存在する。」(p.49,50)

4脳血管性認知症
脳血管性認知症は「まず梗塞、出血などによって意識障害が生じ、そこから回復しても認知障害が残存し、礼儀や規範といった社会的人格は、かなり認知症が深くなるまで比較的保持される」(p.59,60)
ケアの違いとして、アルツハイマーは馴染みの人間関係による、小集団でのにぎやかな生活がよいとされるが、脳血管性認知症の場合は、論理的で現実的な対応をすべき。また気分の変動が大きく、個別的に、充分に言い分を聞くことが必要。

認知症を病む側の視点
・感情機能の保持:
認知症を病む人たちの多くは徐々に『できないこと』が増えていくのだが、一方でそのことを漠然とではあれ感じとる能力は保持されている。自分が人に迷惑をかけていることも、自分が周囲からどのようにみられ扱われているかということも、彼らはとても敏感に感じとっている。そして、不安に陥り、怯えている。」(p.94,95)
・「配慮を欠いた告知と以降の誤った対応は、いわばPTSD(心的外傷ストレス症候群)のように彼らをさいなみ続ける」(p.103)
・『私は私になっていく――痴呆とダンスを』からの引用(?未確認):
「この病気の根底にはつねに不安感がある。何かしなければならないことがあるのに、それが何なのか思い出せない。何か大変なことをしでかしそうに思える。ぱっくり開いた暗い穴にのみこまれないように、崖っぷちに必死でしがみついているような感じだ」
認知症は単なるもの忘れをはるかに越えたものだ。私たちは混乱し、視界やバランス感覚、方向感覚にも問題を生じている」
「私たちは、時間経過の感覚が失われているので、過去も未来もなく、今という現実だけを生きている。だから「あとで」とか「そのときに」というのは通用しない」
「まるで頭の中に綿が詰っていて、思考と感情に霧がかかったように感じる。焦点を定め、注意を払って、自分の周りで起きていることについていくことがとても難しい」
「朝起きると、今日は何曜日か、何をすることになっているのか、が思い出せない。ただ、家でのんびり過ごすだけでも疲れ切ってしまう。お茶のいれかた、シャワーの使い方、服のあり場所、何を着るべきかが分からない」
「決断するには選択肢を思い浮かべる必要があるのだろうが、それができないので、決断できなかったり、遅延したりする」
「ストレスに対する耐性は低くなってしまって、ほんのちょっとしたトラブルにも大げさに反応したり、叫んだり、悲鳴をあげたり、あわてふためいて、おろおろ歩き回ったりする」
・体験としての中核症状(クリスティーン・ブライデンの著作から適宜引用とのこと。未確認)
身体的不調:
疲れやすさ:
「クリスティーンさんの見事な講演やテレビで彼女の安定した生活を見た人には信じられないだろうが、食事をするときでさえ、食物を口に持っていく、口に入れる、噛む、飲み込むということを、その都度、意識してやらねばならないのだという。だから、食事のスピードが遅くなっていらいらされるようだ」(p.117)
身体反応の遅れ:
「平衡感覚がうまく働いてくれず、液体の入ったコップをこぼさずに持つには大変な努力がいる」
「世界はグラグラとした場所に感じられ、その空間のなかで自分の身体の各部分がどこにあるのかさえ分かりにくくなる」
「よく物をひっくり返す。距離感覚が衰えて、たびたび物にぶつかってしまう」
記憶再生の遅れ:
奥行き知覚の障害:
「私もケアの場面でよく経験したが、たとえばフラットな床の一部に市松模様が描かれているとする。そこのところにさしかかると、彼らは立ち止まってしまう。またごうとする人もいる。おそらく本当にでっぱっているか、でこぼこしているか、いずれにしてもフラットではないと感じるようである」(p.121,122)
感覚スクリーニング機能の障害:
「ショッピングセンター、診療所、デイケアのようなところに行くと、ラジオやテレビの音、電話のなる音、人の話し声などの雑音があり、人の往き来が激しい。それはまるで泡だて器のように、頭の中をかき混ぜてしまう」
静かな環境を:
「同時進行人間」の崩れ:
全体把握の困難:
状況の中の自分が把握できない:
応用がきかない:
分類することの困難:
実行機能の障害:
フィードバック機能の障害:
人の手を借りることができない:
自覚できない:
知的「私」の壊れ:

(小澤勲認知症とは何か.岩波書店,2005)