今泉敏:吃音の脳科学.言語聴覚研究2:79-87,2005


○脳機能画像法による吃に関する研究からの原因論
・非優位半球(右半球)の発話運動関連領野の過剰な活動を原因とする仮説
・大脳運動野と小脳、視床大脳基底核が構成する発話運動制御系の過剰活動を原因とする仮説
大脳基底核における神経伝達物質ドーパミンの過剰仮説
・構音コード生成と発話運動の時間的不整合仮設


○脳機能画像法による言語活動に関与する脳領野について
・Geschwindのモデルと重なるものの、モデルに含まれていない領野も存在する。
・ほとんどの脳領野は言語だけに関わるのではなく、非言語的活動にも関与する。
・言語活動に関与する脳領野が相互にどのように作用しているのか未解決。


○まとめから
(p.85)
「Preibishら(2003)の吃症状が軽い話者ほど右前頭葉下部の脳活動レベルは高かったという報告は,右前頭葉下部の過活動が吃の原因ではなく補償的現象であることを示唆している.
 Wuら(1995,1997)やRileyら(2001)はPETによる実験によって大脳基底核神経伝達物質ドーパミンが過剰状態にあることを報告している」
「吃症状を呈する話者では,Broca野と運動野の活動の時間的相互関係が逆転するという報告や,発話運動制御に関わる脳部位の神経走行に違いがあるという報告は,言語的処理過程と発話運動制御過程の時間的不整合,相互関係の不調を示唆している」