JOEL C.KAHANE:発話メカニズムの解剖と生理.監訳,新美成二 訳,西尾正輝,1998


第2章:神経系

1.神経系の生理

・膜電位
細孔:代謝によって開閉の調節がされる
細胞内液:カリウム・イオン多、ナトリウム・イオン少
細胞外液:カリウム・イオン少、ナトリウム・イオン多
・神経インパルスの発生
不応期:再分極が完了するまでは細胞膜の活動している部位に神経インパルスを伝導させることができない。この時期。
シナプス
神経伝達物質:興奮性、抑制性の2種類がある
シナプス後電位の加重
「単一のシナプスニューロンの活動電位がシナプスニューロンに活動電位を起こすのに十分なだけの伝達物質を放出することはまれである」
神経回路:発散、収束、側方抑制、反響回路
反響回路は「呼吸、目覚め、睡眠、協調的な筋活動」

2.神経系の構造
・中枢神経系
脊髄、頸部(頸膨大)、腰部(腰膨大)で膨らむ。上肢と下肢を支配する神経が出ているため。
  感覚根:背側
  運動根:復側
  白質:軸索から構成。上行性(感覚)伝導路、下行性(運動)伝導路もある。
  脊髄反射
  侵害刺激に手や足を引っ込めるもの:屈曲反射
  姿勢や筋緊張に関するもの:伸筋反射もしくは伸張反射
  局部的に刺激を加えると反応が生じるもの:ひっかき反射
  内臓器官のさまざまな反射

  脳幹
  延髄:脳神経(CN)核;舌咽神経(Ⅸ)、迷走神経(Ⅹ)、副神経(ⅩⅠ)、舌下神経(ⅩⅡ)
  脊髄と脳とを結ぶ感覚路、運道路
  心臓や呼吸の調節、血管収縮、嚥下、くしゃみの反射中枢
  
  橋
  橋中央部:前庭―蝸牛神経(Ⅷ)の神経核
  橋底部は膨張している:皮質脊髄路、皮質延髄路、皮質橋路の繊維

  中脳
  神経核動眼神経(Ⅲ)、滑車神経(Ⅳ)
  黒質赤核あり
  四丘体あり
  姿勢反射や運動制御の中枢として機能。瞳孔反射の中枢、視覚、聴覚の伝導路の中継

  間脳
  器官:第三脳室、視床視床後部、視床上部、視床腹部、視床下部
  「言語および音声言語機能のうえで重要な視床核には、内側膝状体(聴覚)、外側膝状体(視覚)、腹外側群核および視床枕(言語と音声言語)がある」(P.61)
 視床下部:体温、血圧、心拍数、身体組織の体液平衡、口渇、食欲、睡眠と覚醒のサイクル、消化活動、腸内の分泌を調節。下垂体の神経内分泌活動の調節もあり、情動や行動の側面にも関与している。
 
 網様体
延髄、橋、中脳の細胞からなる
 視床内側、視床腹部に作用して大脳皮質の活動に影響。注意、意識の役割

 小脳
 「主な機能は筋の運動を調節したり協調させたりすることであるが、小脳が運動を起こすのではない」
 正常な姿勢や平衡に関する反射をも調節している」

・大脳
白質:交連繊維、連合繊維、投射繊維
交連繊維、左右の半球を連結している
連合繊維、同側の半球内の2つの領域を連結
投射繊維、皮質と脳幹、脊髄などと連結

前頭葉に関する運動機能:腱反射、把握反射、筋トーヌスなどあり
島:胃腸管の運動活動、感覚活動に関わっているらしい(詳しくは不明)
辺縁系:海馬、脳弓、乳頭体、視床前核、帯状回、側頭葉、前頭葉の皮質の一部。主な感覚入力は嗅覚系から。欲求や情動の働きを支配。
「Lamendella(1977)が示したように,辺縁系が人のコミュニケーションを行ううえにおいても重要である.しかし,辺縁系が人のコミュニケーションにどのようにかかわっているのか,またどの程度かかわっているのかといった点については今後の研究が必要である」(p.58)


※脳神経
Ⅴ:三叉神経:混合:張筋咀嚼筋、鼓膜、口蓋帆張筋を支配。顔面、舌の前2/3、口腔の感覚
Ⅶ:顔面神経:混合:顔面筋、アブミ骨筋、顎二腹筋の後腹を支配。舌の前2/3の味覚。
Ⅷ:内耳神経:感覚:平衡覚器(半規管)および聴覚器(蝸牛)
Ⅸ:舌咽神経:混合:咽頭筋を支配。嚥下反射に必要な役割を果たす。舌の後1/3の味覚と唾液腺。舌の後1/3および咽頭の触覚、痛覚、温度覚
Ⅹ:迷走神経:混合:軟口蓋、咽頭喉頭の筋を支配。嚥下反射に関与。舌の後1/3の痛覚、温度覚、触覚、呼吸器、心臓、腹部内臓に分布
Ⅻ:舌下神経:運動:外舌筋と内舌筋を支配